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「800字文学館」

高尾山‐七つの楽しみ

大津 隆文

 ほぼ一〇年前に「毎日が日曜日」の生活に入って以来、高尾山に出かける回数が年ごとに増えてきた。最近はほとんど毎週出かけており、一時は家内から「麓に誰か好きな人でも居るの?」と、あらぬ疑いをかけられたりもした。
 では、その魅力とは?
 一、まずは達成感である。麓から約一時間半で山頂(599m)に達することが出来るが、その時の達成感、満足感は誠に心地よいものがある。運が良ければ遥かに富士山を眺めることが出来る。夏は黒々と力強く、冬は雪に輝き神々しい。
 二、しかも、この楽しみが手軽に得られるのがうれしい。わが家から京王線終点の高尾山口まで約一時間、360円で登り始めることが出来る。コースが色々あって毎回違うルートを楽しむことが出来る。雪が降った時の雪上ウォークは最高だ。
 三、高尾山は花の名山と呼ばれるほど、花の種類が多い。山野草が好きな人にはこたえられないであろう。私も春の二輪草、山法師、夏の蛍袋、山百合、秋の釣船草、紅葉などを楽しませてもらっている。
 四、このように四季折々に楽しめる自然は、俳句の貴重な素材でもある。俳句をかじっている私にとっては、高尾山行きは絶好の吟行の機会でもある。なかなか名句を披露出来ないのは残念ではあるが。
 五、昼食はスーパーのお握り(一個68円)だが、山ではこれが大変美味しい。お握りのほかお菓子も持参してゆっくり30分は過ごす。茶店が開いていれば夏のかき氷、冬のなめこ汁は欠かすことのできない楽しみである。
 六、往復の京王線は通勤の流れと逆のため、行きも帰りも座っていける。混んでいる反対ホームを眺めながらゆっくり朝刊を読んでいると、年金生活者の幸せをしみじみと感ずる。また、高尾山口駅に隣接して温泉があり、昼間の露天風呂に入れば極楽気分だ。
 七、とどめは、帰宅後の風呂、スイカ(夏)、ビールである。まさに人生の至福の時間だ。溜まっていた老廃物や邪気は洗い流され、心地よい酔いと疲労感に包まれ、あとは爆睡あるのみ!

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