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「800字文学館」

憧れのハワイ航路

大森 海太

 ホームコースのゴルフ仲間四人で、毎冬近隣の暑い所に遠征して四~五泊、三ケ所のコースでプレイすることにしている。最初の年はグアム島に行ったことから「グアム会」と称し、以降チェンマイ、ダナン、バリ島、クアラルンプルと転戦し、昨年は久しぶりに台南、高雄方面へ出かけたが、以前と違って日本語が全然通じなくなっていたのには驚いた。それでもなにやらのんびりした人たちで、こういうところが北京政府の厳しい監視、統制下に入らないことを祈るのみである。そして七回目となる今年は、死ぬ前に一度は行ってみたいというS君のたっての希望で、ハワイ(オアフ島)に決定した。

 ところでハワイというと頭に浮かぶのが、あのオカッパルこと岡晴夫の「憧れのハワイ航路」である。頭のてっぺんから脳天気な声で、

 晴れた空 そよぐ風 (中略) あああ 憧れのハワイ航路 とくる。

 調べてみるとこの歌が流行ったのは昭和二十三年、なんと日米開戦の嚆矢となった真珠湾攻撃からわずか七年後である。人が好いというのか、済んだことはすぐに水に流すというのか、わが国の良いところでもあり、また弱点でもあろう。なにしろご近所には、歴史認識とか言って自分たちの都合のいいように過去を書き換え、いつまでも難癖をつけたり、領土を拡げようとしたり、機会をうかがっている方々がおられる。根負けしないように絶えず気を配っておかなければならないのだが、そこはすぐにハワイ航路になってしまう国民性で、心配のタネは尽きない。

 そう言えば最近ハワイは、某国の弾道ミサイル標的の一つになっているそうで、先日も警報装置の誤作動で大騒ぎになったとか。のんびりゴルフなどしている場合じゃないゾ、と言われそうである。

 ……などと言いながら実は大いに意気込んでいたのだが、一ケ月前に痛めた太ももの肉離れがいつまでも治らず、結果的には無念のドタキャンをする破目になってしまった。あああ、アキラメのハワイ航路。

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