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「800字文学館」

余命十年

斉藤 征雄

 誕生日を迎えて、七三歳になった。
 厚生労働省発表の第二二回生命表によれば、七三歳(男)の平均余命は13.43年とある。これはあくまで平均値だから、もちろんそれより長く生きる人もいるし、短い人もいる。つまりこの平均値が実現するためには、長く生きる人がいる分、必ず短い余命で終わる人がいなければならないのだが、平均値としては極めて確度が高い数値と考えるべきだろう。
 余命13年といっても、体力は確実に落ちていく。途中で病気になることも考えなければならない。ということは、ある程度元気に過ごせる残された余命、いわゆる健康寿命は、それより少なく見積もらなければならない。しかもそれとて安心はできない。思わぬことで「とらぬ狸の皮算用」になる可能性もある。
 まあ、確率の問題はあるが、「元気に過ごせる余命は、あと十年ほど」と考えておけば、大きな間違いはないということであろう。

 さて、この十年をどう生きるか、などというと問題が難しくなってしまう。いまさら身の丈以上の人物になれるわけではないし、世の中の為になることをしようという思いもさらにない。できるだけ自然体で、世間に迷惑もかけず自由に自分の時間を過ごしたいと思うだけである。
 一応、食うための環境はできているし、すべてが自分の自由な時間というぜいたくな境遇にある。
 自分の時間をどう使うかという問題は、暇つぶしのPriorityをどうするかの問題ともいえる。暇つぶしだから何でもいいわけだが、やはり自分にとって興味があることの順番で時間を使いたい。目下のところ、800字エッセイ、仏教の勉強と学習ノートの作成、囲碁、俳句、旅行、たまにカラオケ等に時間を使っている、そしてすべてに飲み会が付随している。最近、読書会も加わった。それぞれの成果はイマイチだが、まあまあ忙しく退屈しない。

 明日は、800字エッセイの会。この原稿を書き終えたら眠ることにしよう。
 こんな日が、三六五二日積み重なれば十年が過ぎる。

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