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「800字文学館」

沖縄(3) 地政学的位置

志村 良知

 地図を見れば一目瞭然であるが、東シナ海は長さ1200キロの南西諸島に囲い込まれ、太平洋は南西諸島東岸から始まっている。沖縄はその南西諸島の中央付近にある。
 大陸東端と沖縄を支配する国家が出現すれば、東シナ海はその国の内海になる。そうなれば東シナ海の漁業資源、鉱物資源を独占できるほか、太平洋に直接面することになるので西太平洋のシーレーンを支配できる。
 現在ユーラシア大陸東端を支配する中国は尖閣だけでなく、沖縄諸島全体について朝貢国時代を根拠に領有権に言及しているし、人民解放軍は西太平洋の覇権への意図を隠さない。

 東シナ海には豊富な資源の他に沖縄トラフという深い部分がある。本国が核攻撃されたら直ちに反撃して相手国も滅ぼす、という相撃ちの恐怖で戦争を抑止する兵器であるミサイル原潜は、内海の探知不能の深い場所に隠す必要がある。現在の中国には適した内海がなく、潜水艦が動けば直ちに衛星や日米の対潜部隊に捕捉されてしまう。また、北朝鮮弾道ミサイル迎撃用のTHAADの韓国配備に中国が執拗に反対しているのは、そのレーダーで内陸基地の弾道ミサイルの早期警戒が可能になり、核報復力がさらに弱体化するからである。
 東シナ海を内海とすれば内懐の沖縄トラフにミサイル原潜を隠してしまえる。互角の核報復力を持ち、沖縄基地から空母機動部隊を太平洋に向ければ、米国に代わって西太平洋の覇権を握れる。日本と韓国のシーレーンを扼して屈服させるのは簡単である。

 この米国にとって代わる太平洋覇権国家の夢を実現するための最大の障害は、攻めると米国と全面戦争の可能性がある米軍基地である。これさえ無ければ、小さな島である沖縄を孤独に守る自衛隊守備部隊を排除することで我がものに出来る。国連の各機構や敵国条項や欧米のマスコミまでも利用して日本を侵略国家だ、好戦的だと喧伝し、貶めるのは、沖縄の米軍基地の存在根拠となっている日米安全保障条約の骨抜きを狙ってのことである。 (続く)

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