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「800字文学館」

ロンドンの春

塚田 實

 梅の季節も過ぎ、東京では全国に先駆けて、3月21日桜の開花が発表された。春本番を迎え、何となく心が浮き立つ。

 2000年から2003年までロンドンに駐在した。冬の気温は東京とあまり変わらないが、雨が多くじめじめとうっとうしい。ゴルフでフェアウェーど真ん中に打ったはずの球が、地面に埋もれてロストボールになってしまう。

 冬が厳しいだけに春の喜びは格別だ。先ず紫や白のクロッカスが咲き始め、次に水仙が花開く。自然の変化に胸躍るが、色んなイベントも始まる。

 5月末ロンドン南西部のチェルシーで王立園芸協会主催のフラワー・ショーが開催される。世界中のガーデン・デザイナーが競って参加し、とても華やかで春の訪れを実感する。
 同じ頃グラインドボーン音楽祭が幕を開ける。オペラハウスは、ロンドンから南へ車で2時間半の牧草地帯の一郭にある。羊の群がる丘に囲まれながら、オペラとピクニックを楽しむ。午後3時頃シャンペンを開ける。オペラは5時前に始まるが、途中1時間半の幕間があり、またワインを飲み食事をする。豊かな一日だ。
 6月後半には、アスコット競馬場でロイヤル・アスコットが開催される。服装は男はモーニングと山高帽、女はフォーマル・ドレスに帽子、競馬場は映画「マイ・フェア・レディ」のオードリー・ヘップバーンであふれる。
 7月初めウィンブルドン・テニスが始まる。2001年センターコートでイワニセビッチの準決勝を見たが、球のスピードの速さと迫力あるプレーに圧倒された。
 テニスが終わると、全英オープンが開始する。2000年はセントアンドリュース・オールドコースで開催され、当時絶好調のタイガー・ウッズが圧勝した。一度このコースでプレーしたが、バンカーとブッシュ、アウトとイン共用の巨大なグリーンには悩まされた。

 今では懐かしいロンドンの春から初夏にかけての情景だ。桜の芽が膨らむこの時期、新たな自然の営みと様々なイベントを思うと身も心も弾む。

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