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「800字文学館」

二つの河津桜

清水 勝

 早春を告げる早咲きの桜を観たいが、河津まではチト遠い。そこで京急 三浦海岸駅前から小松ヶ池公園までの河津桜と、小田急 新松田駅に近い松田山の斜面(西平畑公園)に咲く河津桜を観に出掛けた。
 三浦海岸の河津桜は、高度成長の末期に海水浴客が減少したことと、夏場以外にも観光客を呼ぶために何か目玉はないかから生まれた。そこに登場した企画が河津桜で、三浦海岸の暖かさのPRにもなると、地元の商店主たちが河津町に赴き、許諾を得て4年がかりで1千本の桜の木を京急沿線に植林して現在の見事な河津桜の並木を作り上げたという。今年は15年目で、多くの人で賑わっている。河津桜とその根元に咲く菜の花に満足。
 しかし、我ら歩き仲間はこれだけでは満足できない。もっと歩かにゃと三浦海岸、三浦大根畑を廻ってみた。仕上げは地元の魚料理店『海鮮』だ。30分ほど待たされたが、三浦で獲れたカワハギと松輪サバが旨い。

 一週間後には第19回『まつだ桜まつり』に出掛けた。山頂のハーブガーデンを目指して、斜面の河津桜を観ながらの登りとなる。ここの魅力は桜の花越しに真っ白い富士の嶺が見えることだ。目を転ずると湘南海岸も望める。
 人、人だけに帰りは早めにシャトルバスに乗る。駅から酒匂川の河原まで歩き、携帯コンロ二台で煮て、焼き、酒の燗をして大いに盛り上がる。酒匂川の名につられて、地元の造り酒屋『中澤酒店』の見学となる。『松美酉』を購入。
 どうやら花に酒は付きもののようで、話題は四月の本格的な花見はどこにしようかであった。

 さて、河津桜とはどういうサクラなのだろうか。
1955年に伊豆河津町で偶然に原木が発見されたサクラで、ヒカンザクラと早咲きオオシマザクラの自然交配で生まれた新種である。ソメイヨシノに比べ、早咲きで花の色が濃く、華やかな感じがする。そして1月下旬~3月上旬にかけて一カ月近く咲く花期の長い特徴を持つ。

 何はともあれ、春、サクラが恋しい。

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