作品の閲覧

「800字文学館」

スーパームーン

内藤 真理子

 散歩がてら買い物に行った帰り道、黄昏時から夕闇に変わろうとしている東の空にまん丸い大きな月が出ているのに気がついた。兎が餅をついているような模様まではっきり見えた。
 家に帰って新聞を見たら「大きな月に会えるかな」という見出しと共に『満月が一年で最も地球に近付くスーパームーンが、明日十四日の夜各地で観測される。満月としては六十八年ぶりの近さである』という図解付きの記事が載っていた。
 早速〝前夜祭だ!〟と、スーパームーンを見ながら一献傾けた。
 十四日は曇り空で月は見えなかったものの、前日見たのは僥倖(ぎょうこう)だった!とまた一献。それは然(さ)る事(こと)ながら、こんなに大きな月を見ると、人は太古の昔から空のかなたに思いを馳せるのだと思う。

 代表格では、宇宙のどこかの星で罪を犯し、地球に島流しにされたかぐや姫の話が各地に語り伝えられている。
 日本最古の仮名で書かれた「竹取物語」は、原本は現存しないが、室町時代に後光厳天皇が書かれた写本が残っている。(ウイキぺディア参照)
 原本は〝竹取説話群〟を元に、紙が手に入り、貴族の情報を入手できる上流階級の人によって書かれたものと推測される。
『竹取の翁が竹藪でひときわ光る竹を見つけて切ってみたら、中に女の赤ちゃんがいた。竹の節からは切る度に金が出て翁は大金持ちになり、女の子は三ヶ月で美しく成人してかぐや姫と名付けられた』
 で始まる話は、噂に聞いた美しいかぐや姫を一目見たいと恋い慕う者は大勢いたが叶わず。最後まで諦めなかった五人の求婚者に、宮中の人なら誰のことか想像できるような、当時政権を握っていた藤原氏の周りの人を登場させ、無理難題を課して面白おかしく話を作りあげている。
 書き手も読み手も上流階級の人達で、月を愛でながら、奇想天外な物語を身近な話に引き寄せて、秋の夜長を楽しんだ事だろう。
 最後は、この世のものとも思えない光とともに、空の彼方に去って行くのだが、昔も今も月の嬉しさよ……。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧