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「800字文学館」

大地の芸術祭

大月 和彦

「越後妻有の里―大地の芸術祭」は、新潟県十日町市を中心とする妻有の里で開かれる国際的な芸術祭だ。

 県東南部の頸城と魚沼の二つの丘陵と信越国境の山に挟まれた地域は、行きづまりの地の意から「つまり=妻有」と古くから呼ばれてきた。有数の豪雪地で、上越線六日町から上越市直江津(犀潟)に通じる北越急行ほくほく線が横断している。

 大地の芸術祭は、縄文の遺跡があり、過疎化が進むこの地域で、里山の持つ様々な価値を芸術が仲立ちすることによって掘り起こし、発信し、地域再生を図ろうとする活動。上越市出身で瀬戸内国際芸術祭を手がけたアートディレクター北川フラムがプロデュースした。

 野外ア―トの展示だけでなく、妻有の里全域にわたって棚田バンク、農耕体験、廃校校舎の活用、演劇、歴史資料館など総合的な活動を行っている。

 芸術祭が行われているエリアの一つ、十日町市松代地区。ほくほく線まつだい駅のすぐ前の畑地に横たわる奇抜な造形物が目に飛び込んでくる。赤、黄、緑などの水玉模様がちりばめられた絵画と彫刻が一体化したような大きな作品。昆虫とも花びらとも見える。
 2016年に文化勲章を受章した前衛芸術家草間彌生の作品「花咲ける妻有」だ。
 強烈な印象を与えている。繊細で優しい里山の原風景ともいえるこの地に調和するのかどうか。

 活動の拠点として駅と繋がって「まつだい農舞台」が建っている。オランダの建築家設計の白亜のピロティ様式で二階部分には劇場、ギャラリー、レストラン、ショップなどがある。

 農舞台の南に広がる棚田、畑、森林など里山一帯のあぜ道や農道を歩くと奇想天外な仕掛けや色彩豊かな造形物など世界各国のアーティストの作品が次々現れる。
 里山全体を自然と芸術に囲まれた野外ミュージアムと見立て、アートとこの地が持つ伝統や文化とを組み合わせることによって新しい価値を生み出そうとする試みだ。
 一見異質とも見えるこれらの作品が里山の風景と調和し新しい景観をつくっているように見えてきた。

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