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「800字文学館」

モーツァルトの音楽療法

川口 ひろ子

 日本モーツァルト協会主催の「モーツァルトの音楽による認知症の予防と改善に役立つ音楽療法」と題する講演会を聞いた。講師は、埼玉医大で教鞭を取り、出版、CD、テレビ、各地での音楽セラピーコンサート等で活躍中の和合治久理学博士だ。

 モーツァルトを聴くと頭の良い子が生まれるとか、牛の乳の出が良くなるとか、微笑ましいエピソードは昔からよく言われている。かなり胡散臭い話に「ええー」とうすら笑いを浮かべ、話題を方向転換するモーツァルティアンは多い。
 しかし、モーツァルトの音楽が高周波とゆらぎ効果に富んでいることは確かでこれが人間の心と身体の健康維持のために大変有効であるという。
 先生はこの事実の科学的な証明と、これを音楽療法など実用に活かす研究をライフワークとしている。これは社会的に高く評価されていて文部大臣賞ほか受賞多数、2015年先生が監修しテイチクが発売したCD「自律神経を整える音の処方箋~愛の周波数528Hz~」は、第57回日本レコード大賞企画賞を受賞した。

 大柄で丸顔の和合先生は、研究結果を報告する沢山の資料をパワーポイント使用で丁寧に解説して下さった。比較免疫生物学など医学の専門用語や細かい数字は理解できなかったが、淡々とお話しなさる先生の温和な人柄は大変魅力に溢れていた。
 質問タイムだ。「モーツァルトを聴けば病気にならないなんて信じられない」と、うるさ型の多いモーツァルト協会会員は、ペテンといわんばかりに次々と質問を投げかける。
 それらを肯定も否定もせず「そうねー」という感じでさらりとかわす先生、日々治療現場に居る人の自信のなせる業であろう。

 モーツァルトを毎日聴いている私も、昨今は、足が痛い腰が痛いと体調不良に悩まされ家に籠ることが多い。
 しかし、間もなく傘寿というこの年齢まで大病をせずに生きて来られたのは、モーツァルトの恵みをしっかりと頂戴して日々暮らしてきた結果に違いない、と思っている。

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