作品の閲覧

「800字文学館」

TKG

三 春

 日本人ならみんな大好き「卵かけご飯」、近ごろはあれをTKGとも呼ぶ。ホッカホカご飯のてっぺんに卵をぽちょんと割りいれて醤油たら~りの基本形に加えて、多様なトッピングも楽しまれている。
 TKGは、KY(空気読めない)などと同じく若者言葉だが、『365日たまごかけごはんの本』を出した某社の商標。つまり商業的な仕掛け人がいる。

 ……食べる人を選ばない、合わせる食材を選ばない、エヴリシングウェルカムの驚くべきフリーダムに溢れた「たまごかけごはん」の新大陸をついに発見しました。その驚くべき慈愛と博愛に満ちた新ワールドを探検するにあたり、「煮ない、焼かない、チンしない。お願いしない、自分で作る」というきびしい「たまごかけごはんのおきて」をモットーに……

 と、大層なコンセプトだ。なかにはギョッとするようなトッピングもあるらしいが、シラスと大葉に柚子胡椒を溶いた醤油をかける純和風TKGや、トマトにバジルソースとタルタルソースの洋風TKGなどはお薦めとのこと。

 ご飯党の私も昔から自己流のトッピングを試してきた。シラスと青葱、海苔佃煮とチーズ、トロロと大葉、明太子とバター、アボカドと山葵、ナメタケと焼海苔、キムチとクリームチーズ、まぐろ納豆などなど。

 ところで、世の中には「全卵派」とは別に「黄身派」も少なからずいて、残った白身は捨てられることが多い。この白身を活かすアイデアはないものかと常々思っていた。
 それを解決したのが『目がテン』、様々な課題を科学の目で調査するTV番組である。なんと「白身かけご飯」を美味しく食べるためのベストマッチ・トッピング——ナメタケに麺つゆとごま油を混ぜ合せる——を見つけてくれた。科学の目によれば、ナメタケの核酸系と麺つゆのイノシン酸やグルタミン酸などさまざまな旨味成分の相乗効果が生まれるのだそうだ。
 さっそく試してみた。意外や意外、新感覚のオツな味。これなら「白身派」も現れそうだ。今度は黄身(君?)が捨てられる番かも……。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧