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「800字文学館」

ロシアの古都 ウラジーミルとスーズダリ

都甲 昌利

 モスクワの東、約250キロのところにあるウラジーミルとスーズダリはモスクワが首都となる前の都であった。日本の奈良・京都に当たる。ウラジーミル、スーズダリが歴史上の文献に登場したのは1024年頃となっているが、実際は7世紀に基礎が築かれたらしい。私がソ連体制のモスクワに在勤した時代は旅行が制限されていたが、特別な許可を取得して訪れた。古い寺院や教会、修道院が100近くもあるのに旅行者が見物できたのは2箇所だけであった。
 1989年、ソ連が崩壊し新生ロシアが誕生して旅行が自由になったので30年ぶりに再び訪れた。今回の旅行で、当時この古都が観光客に解放されなかった理由が分った。スターリンの独裁政治の治下、政治犯の強制収容所だったのだ。修道院は高い塀で囲まれ、各部屋は鉄格子がはめられ逃亡を防ぐのに格好の施設だった。

 町は昔と変わらず美しい古都の佇まいを残していた。イタリアのフィレンツェのように町全体が博物館なのだ。フィレンツェと異なり緑の森と平原の中にゆったりと寺院や教会などの建造物が存在している感じで、私はフィレンツェより好きだ。ビザンチン風のロシア独特の建物は建築学上も貴重な存在で、木造建築の教会があるのも珍しい。そしてそれらが上手く調和して町全体を美しくしている。

 現在はすべての寺院、教会、修道院が開放されて多くの観光客が訪れる。。町の景観を保つため近代的なホテルの建設は許されず、我々が泊まったホテルはポクロフスキー修道院の中にあり外観は木造のコテージ風だが、内部は近代的なホテル施設でバス、トイレ、テレビなどすべて整っていて快適な宿泊が出来た。
 この修道院は実際に使われており黒い僧服をまとった修道僧が修行している。早起きして散歩をする。鳥がさえずり教会の鐘が響き幻想的で至福のときを過ごした。朝食などは彼らと一緒の食堂でする。この美しい街をもう一度訪れてみたい。

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