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「800字文学館」

歌劇「ダナエの愛」

内藤 真理子

 この歌劇はリヒャルト・シュトラウス作曲のオペラを、深作健太が演出。二つの神話を組み合わせた話で、オペラ初心者の私には始めは解りにくかった。

 第一幕。破産寸前の国で大勢の借金取りが入り乱れる。王女ダナエの政略結婚が頼みの綱。その夜ダナエは黄金の雨と交わる夢を見たが、それは夢ではなく、ダナエに思いを寄せた主神ユピテルが黄金の雨に変身していたのだ。
 次の場面で、ミダス王に変身したユピテルは、ミダスを従者に仕立て上げ、ダナエに結婚を迫る。ミダスが二人いるのだろうか? 話がこんがらがってしまったので二幕以降を先取りする。
 ミダスはロバ使いの貧しい青年だった。年老いたユピテルは、この姿ではモテない!と思いミダスと取引をする。手に触れるものは何でも黄金に変える力を与えるので、代りに自分が望む時にはミダスになり替わる、というものだった。取引をしたミダスは、色々なものを黄金に変え国王になった。ユピテルは女を誘惑するときにはミダスに変身し、思い通りに女たちを手に入れた。

 第二幕。黄金の雨に愛撫される夢を見たダナエは、幸福感が忘れられない。ミダスはダナエを愛してしまいダナエも……二人は結ばれた。ミダスはユピテルとの約束を反故にしたのだ。しかし手に触れるものを黄金に変えてしまうミダス。ダナエは黄金になり、彫像のように固まってしまった。
 私は固唾をのんだ。手に触れるものを黄金に変えるというのは、こういうことだったのか。
 黄金になったダナエを、ユピテルは天国の神殿に連れて行こうとしている。
 〝死んでしまっては何にもならないじゃない、貧しい愛か、死後の幸せのどちらかを選択しろと言うの?゛ 
 初心者の私は気がついた。これは神話の世界。天上界と下界が自由に行き来出来る事が前提なのだ。

 第三幕。再びユピテルは黄金を持って求婚するもダナエは愛を選ぶ。
 そう言えば、パンフレットに書いてあった。『ダナエの愛』はその名の通り、何よりも愛、愛の力の物語だと。
 見終わってみれば、ワクワクドキドキしながら観ていたのだった。

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