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「800字文学館」

ホールインワン回数1.5回

川村 邦生

 ゴルファー誰しも生涯一度はと願うホールインワン、幸い今までに1.5回のホールインワンを果たした。何故1.5回となるかを説明しなくてはならない。1回は真正ホールインワンを日本でだが、0.5回が問題だ。

 インド勤務時代、外での遊びはゴルフかテニス。英国統治時代から遊び好きな英国人は各地にゴルフ場、テニス場、クリケット場を作りクラブライフを楽しんだ。それが残っているのだ。今は上層のインド人、外国人にも開放され面接を受ければ入会できる。
 日本人同士でのコンペも盛んで、週末イベントが開催されている。雨季であろうと乾季であろうとゴルフバカはプレーに熱中する。人件費の安いインドでは、1プレヤーに1人のキャディーがつきバックを担ぐ。ほかに1組に1人のフォアキャディーが前方でボールの行方を確認する。

 そのキャディー達が時々悪さをする。プレーヤーが打ってくるボールを待つショートホールのグリーン付近でだ。樹木が多いためプレーヤーからボールの落下地点が確認できない。キャディー達皆がグルになり、ホールに近づいたボールを足でつまんでホールに入れてしまう。
 プレーヤーがグリーンに到着すると皆でボールを探す。彼らも探すふりをし、そのうち1人が、「ホールインワン」と大声で叫ぶ。
 何故、そんなことで偽ホールインワンを起こさせるかというと、プレーヤーが大金のご祝儀を出すことを知ったからだ。さすがに常連者にはしないが、出張者だけでのプレーなどの場合にだまされる。

 赴任して間もなく、常連になる前、人為的ホールインワンを果たした。同伴者から、君もやられたのか、気をつけろと笑いながら同情された。
 この時、真偽が確認できないため、スコアカードには、「1」と記載せざるを得なかった。
 聞かれた時、インドで1回やったよと答えていたが、帰国後本物を果たした後は「1.5回」との答えに変えた。
 しかし講釈が必要になり面倒なので「真正1回」と答えることにした。

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