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「800字文学館」

どこか変だぞ、テレビの語り

首藤 静夫

 いつ頃からか、テレビのナレーターの語り口に違和感を感じるようになった。例えば、
「一人のアメリカ女性が、書いたともいわれる詩が・・」……①
「○○は、室町時代京都始まります。」……②
「単独で立候補するよりも世界遺産に選ばれる可能性が高くなる・・」……③
「その技術が、新たなエナセーブを生み出していく。」……④
 各局から適当にピックアップしたナレーションの一部だ。太字の部分が強調された語りだった。
 普通に読むなら力点は、①は「アメリカ女性」、②は「室町時代」か「京都」のいずれか、③は「単独で」、④は広告製品の「エナセーブ」となりそうだ。
 不自然な抑揚でやられると、聞いていて気持が悪い。これが、訓練されているはずのプロのアナウンサーの語りだろうか。
 テレビ局はどのように見ているか、NHKにメールした。返事はない。今度は、ある民放のアナウンサー室に電話した。話は一応聞いてもらえたが、要領を得ない応答に終わった。

 不自然な語りの原因はいくつか考えられる。
イ.必要のない読点をつけることで全体のリズムが崩れる。(上記①)
ロ.名詞や動詞をいちいち強調するのでどこが力点か曖昧になる。(上記②)
ハ.長い文章を読むうち、意味のない部分を思わず強調。(上記③)
ニ.文末を締めたいのか、大事な部分よりも文末の動詞を強調。(上記④)
 特にニ.は常態化しており、都度不快にさせられる。
 リズムの悪い言葉を毎日聞かされる子供たちの先々が思いやられる。素人でさえ感じる不自然さをテレビ関係者が放置していることが不思議である。

 私たちの祖先は助詞や助動詞を発明し、流麗な日本語を作り上げてきた。声調も、繊細微妙で流れるようなリズムを持っている。それを音節ごとにぶつ切りにしたり、不自然な抑揚で語るテレビを何とかできないだろうか。
 かつてのNHK・加賀美幸子氏のように、優美な上に明瞭な発声で多くの人を魅了したアナウンサーが懐かしい。

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