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「800字文学館」

デスノート

内藤 真理子

 ミュージカル「デスノート」を観た。原作は、大場つぐみ・小畑健(絵)の漫画であるが、読んでいなかったので、先入観なしで見ることができた。
 最初に死神が登場する。その仕事は、下界にいる人間の中から、無作為に何の理由もなく、死者を選び、デスノートに名前と死因を書き込み、抹殺することである。登場した死神は、この単純な作業に飽き飽きして、退屈しのぎに、誰かに拾わせて成り行きを見学することにした。
 拾ったのは、頭の良い、清廉潔白な好青年。黒い表紙の「デスノート」には、『このノートに名前を書けば、その人は五十秒以内に死んでしまう。死因を書くとその通りになり、書かなければ全員心不全で死ぬ』と書いてあった。
 その時、たまたま公開テレビで、幼稚園に侵入した男が、園児を人質に取っている映像が映って、男の名前が読み上げられた。ノートを拾った青年は、半信半疑で名前を書くと、本当に犯人は五十秒以内に死んでしまった。
 正義に燃える青年は、このノートを使って世界中の犯罪者を抹殺して理想の世界を作り上げようと、手あたり次第、実行に移す。
 正義だと勘違いして、殺人をする者がいるという事に気づいた警察は、探すが手も足も出ない。中には神と崇める者まで出てくる。だが、何といっても彼は死神の代理なのだ。捕まるわけがない。そこで頭脳明晰な名探偵が現れ、頭脳戦を展開する。
 解りやすい筋立てで、おもしろかった。青年は、柿澤勇人(ダブルキャストの一人)、名探偵、小池徹平。その他、大勢の美男美女の俳優が、テンポよく、舞台を駈け回る。ベテランの俳優が舞台を締める。死神役の吉田綱太郎(NHKの朝ドラで白蓮の夫の石炭王を演じた人)が、ユーモラスな演技で、先に述べた死神の定義を好演。
 奇想天外な話ではあるが、死神がいるとするなら、定義通りの死神でなくっちゃぁと思ったり、あなたならどうする?と聞かれたらどうしようと思ったり、たかが漫画、されど漫画の世界を充分堪能した。

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