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「800字文学館」

ペンは強し、されど

富岡 喜久雄

「ペンは剣より強し」との箴言がある。「文は武より強し」の意と言うが、「つよさ」に漢字を充てればどれが相応しいだろうか。「強」「勁」「剛」他いろいろあって「つよさ」にも意味合いの差がある。構造体にも剛構造から柔構造まであり、「柳に風と受けながす」つよさも「後家の突っ張り」のつよさもあって悩ましい。国の強さについても同様だろう。

 或る日、ミッション系の女子大に通っている孫娘が夏風邪の家内を見舞いにやってきた。雑談ついでに「左の頬を打たれたら、右の頬を差し出すかね」と尋ねてみた。
 彼女は、間髪を入れず、「相手の左頬を張り倒す」と答えてきた。
 文武両道を善しとする教育を受けたこともある爺は、得たりと賛意を表したものの、彼女の表現に驚いた。彼女は校是に共鳴して入学したのではないようだから例外としても、淑やかな大和撫子は今や何処へ消えたかと寂しかったのである。

過日我がペンクラブに絡んだある体験をした。地元の国際交流協会関連の会合に話題の提供要請があった。それは海外駐在経験のある年配男女の会で、英文記事を題材に議論するものだった。
適当な記事がNETで見つからず、嘗て我がペンクラブに投稿した拙稿「ウーマンパワー・アゲイン」を英訳し、討議課題の中に「日本でサッチャーやメルケルのような女性首相が現れるだろうか」と入れて提供した。

 記事内容は、アベノミクスの女性活用策の不自然さを指摘した点はあるものの、女性蔑視論などではなく女性の役割賛美論であった筈なのに、女性陣からクレームが付いたと変更を要請された。
「日本に女性宰相が現れるだろうか」との問いかけが、「そんなことある筈がない」とも解釈されると言う。反論したが、大方の女性から反発があったのでとの回答。当方は何の痛痒も感じないが、突っ張って変更を拒否し辞退した。ペンの力の限界をいささか実感した次第。
 ペンも紙がなければ役立たぬ。
 故に「ペンは強し、されど・・・」でもあろうか。

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