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「800字文学館」

パワポに挑戦

清水 勝

 昨年の学生アンケートに「講義にパワーポイントを使って欲しい」との要望が出されていた。それを読んだ当初、教科書があり、必要なものは補足資料を配布しているではないか。板書もしており、ノートテイクするのが大学生のあるべき姿勢ではないかと思っていた。
 しかし、常に工夫と新しいことに挑戦しなければとの意識も芽生えてきたことから、春休みにパワーポイントなるものを勉強してみた。その中でキーボードの右上にあるPrt Scr (プリントスクリーン)は、その名のとおり画面全体がコピーできること知った。それをアクセサリのペイント活用により、何だってコピーできるのだ。新聞記事も各種のデータやグラフもこれでスクリーンに示せる。小保方さんもこのコピペが得意だったのかなどと余計なことを考えながらも作業を進めた。
 やっている内にいろいろと凝りだしたら止まらない。より見栄えのいいものを創ったつもりで、最初の授業で十数枚のパワポを得意になって披露した。なるほど受講生の目が映像に注がれているなと満足して講義を終えた。授業の終わりには課題を与えて、その場でレポートを書かせて提出させているが、一枚のレポートの欄外に「先生、パワポに色を付けないで下さい」というのがあり、ハッと我に返った。
 多数の受講生の中には色弱の学生もいるのだ。鮮やかな色かも知れないが、彼にとっては判りにくいものに違いない。申し訳ない。得意げになっていた自分が恥ずかしい。
 色弱は医学的には色覚障害と呼ばれ、赤を感じる機能が損なわれている第一色覚障害、緑を感じる機能が損なわれた第二色覚障害があり、これらは赤や緑の差が判りにくい赤緑色覚障害で、色弱の殆どを占めている。日本人の場合、男性の約二十人に一人、女性は約五百人に一人の割合だという。中には本人が自覚していない軽度の場合もあるようだ

 いずれにせよ、あらゆることを想定しなかった己の配慮のなさに気付かされた。

2014.7.24

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