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「800字文学館」

山ガール万歳―尾瀬満杯

大月 和彦

 職場の山仲間と梅雨入り前の尾瀬ヶ原へ行った。早朝東京駅からマイクロバスで発つと11時には尾瀬の入り口鳩待峠(標高1591m)に着く。

 尾瀬の環境保護対策は先進的と言われている。
 入山ゲートには、靴底についた泥や種子などの侵入を防ぐためマットが敷かれている。
 山小屋は予約制、小屋では風呂での石鹸と歯磨きの使用が禁止されている。各所にあるトイレは水洗化され、清掃協力金の箱が置いてある。無視する人も多いが…。

 峠から尾瀬ヶ原西端の山の鼻小屋までの下りは、途中から上りと下りに分離された二本の木道になる。基礎の柱を打ちこみ、歩く部分は厚い木材で出来ている。木の香が匂う新しい木材の箇所もある。
 尾瀬一帯は東電の子会社が管理している。トイレや木道の管理だけでも大変な負担だ。東電の合理化計画ではこの会社も対象になっているという。

 湿原に敷かれた木道は歩行者が途切れることはない。胸にワッペンを付け、ガイドに先導されたツアーの客で、高齢者が圧倒的に多く、大部分が女性だ。
 色とりどりのバッグを背負い、ストックを持ち、ペットボトルをぶら下げている。ウェアや帽子など身支度も華やかだ。
 しっかりした足取りでさっそうと歩いてくる一団に遇うと「山ガール」のパワーに圧倒される。よくこんな体型で、ここまで歩いて来たなと思う人も多い。日頃からジムにでも通って足腰を鍛えているからだろうか。

 夜行バスが運行され、尾瀬が身近になっている。大衆化し過ぎて環境が破壊され、昔の静寂な雰囲気がなくなったと嘆く声もある。所々に設けられた待避所のベンチは満員だ。切れ目のなく続く行列をさばききれない。立ち止まるとすぐ渋滞してしまう。
 が、一部の登山者だけでなく、山が初めてという高齢の男女が尾瀬の自然を満喫できるようになったのは喜ぶべきことと思う。

 ツアー客の流れに乗せられ、見ごろのミズバショウや残雪の至仏山などをゆっくり眺めることが出来なかったけれども、3時間の体力テストには合格したと満足している。

(14・6・20)

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