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「800字文学館」

スノ―ボード考

大月 和彦

 ソチ五輪で日本は金1、銀4.銅3の計8個のメダルをとった。
 冬の五輪種目は、スキー、スノ―ボード、バイアスロンの雪上競技とスピ―ドスケート、フィギギュア、アイスホッケーなど氷上の競技がある。ボブスレーやカーリングなどは氷の競技に入るのか。
 今回のメダルの内容は、スケートではフィギュアの1個だけ。スキ―では伝統的なノルデイック種目で3個、残りは新興の競技スノーボードの3個とフリースタイル・スキーの1個だった。

 スノーボードは、幅広の一枚の板に両足を固定し、横になって滑るアメリカ生まれの新しいスポーツ。1980年ごろから日本にも入ってきた。
 これがスキ―場に現れ始めた頃は、奇妙なものが闖入してきた感じで、当惑した記憶がある。
 動きが鈍く、コースの真ん中にしゃがみこむなどボーダーのマナーも悪く、「正統派」スキーヤーから厄介者視されていた。名門のスキー場やゲレンデではスノーボードお断りだった。

 その後状況が変わってきた。用具が改良され、ウェアが派手になり若者に受けるようになった。技術もマナーも良くなったようだ。深雪の中もすいすい飛ばし、慎重に滑るシニアスキーヤーを追い越して行く。心中穏やかでない。

 奥信濃のあるスキー場では往年の3分の1に減った来場者の8割がスノーボーダーで、これ無しでは経営が成り立たないという。

 五輪にはスノーボードが男女各5種目もある。その一つ、ハーフパイプは円筒を半分に切ったスロープをブランコのように往復し、空中高く跳んだり、タ―ンしたりする曲芸のような演技で、採点で優劣を決める。
 テレビ向き、劇場型の競技で視聴率が高く、五輪では花形になっている。

 アルプスと北欧で生まれたスキーは、雪の山野を跋渉することが原点だ。肥大化し、観客を過度に重視した五輪は、原点に立ち返り、アルペンとノルデイック種目(ジャンプ、クロスカントリー、回転、滑降)ぐらいに絞れないものか。
 商業化が進み、刺激とスリルを求めるテレビ時代には無理な注文だとは思うが。

(14・4・11)

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