作品の閲覧

「800字文学館」

千年ロマンの旅・国東半島

都甲 昌利

 大分県には国宝の建造物が二つある。宇佐神宮と富貴寺(天台宗)である。宇佐神宮は良く知られているが、富貴寺は余り知られていない。法隆寺が日本に現存する最古の木造建築物ならば、富貴寺は九州で現存する最も古い木造建築物で718年の開祖といわれている。国東半島の北西に位置する豊後高田市(人口3万)の郊外にある。本堂内の重要文化財・阿弥陀仏は湿気を防ぐため雨の日は扉を閉めるので拝観できないこともある。もともと、この地方は神様と仏様が一体となる六郷満山文化が色濃く残る地域で歴史ある寺社仏閣が多い。

 日本全国から筆者と同じ都甲一族がルーツ探しに、豊後高田市の史跡や菩提寺、墓を訪ねるというので参加し各地を廻って来た。宇佐神宮では本殿の奥まで入れてもらい、神官のお話を聞く。全国4万ある八幡神社の総元締めで、お神輿の発祥は宇佐神宮からだという。最近は伊勢神宮に比べてお参り客は少ない。
 次の日は都甲家の菩提寺曹洞宗「妙覚寺」に参集し、住職に先祖の供養をして頂いた。この寺は宇佐神宮の命により建立された。住職は駒澤大学卒の仏教学者で、神奈川県鶴見の総持寺の住職も兼ねる。ここでも六郷満山文化の講話を聞く。宇佐神宮も嘗て弥勒寺という寺院を有していた。これは「神仏習合」といって神と仏の出会い、自然の中に神を見る信仰と人間の生き方を求める仏教と神道が調和する、いわば共存の道で世界でも珍しいという。奈良東大寺・三月堂の脇にある手向山八幡宮は宇佐神宮より守護神として建立された。分社第一号である。ここにも外来宗教の仏教と神との「神仏習合」がみられる。

 緑豊かな国東半島は、この外、石仏(仁王石像は日本最多数)、石塔の宝庫であり、奈良、京都に次ぐ千年の仏教文化が今も息づいていることは驚きである。古の日本の農村の原風景がまだ残っていて、市では国東半島を世界文化遺産に登録すべく県と協力して文化庁に働きかけているという。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧