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「800字文学館」

春の雑草―おじゃま草

大月 和彦

 3月になると庭先の10坪ぐらいの畑に草が芽を出し、あっという間に緑の面積が広がってしまう。
 4月から庭や畑にはびこりだす雑草との果てしない戦いが始まる。
 一番先に芽を出すのはハコベ、スズメノカタビラ、カタバミ、ヒメオドリコソウなどの雑草だ。春の七草とされるハコベは、たやすく引き抜くことができるが、いったん花が咲き結実すると、種をまき散らし、翌春には無数の芽を出すので油断できない。

 数えきれないほどある雑草のうちこの時期、厄介なのがドクダミと最近殖えてきたハナニラだ。
 ドクダミは、とにかくしつっこい。白みを帯びた厚ぼったい葉と赤い茎が所かまわず生えてくる。根元からちぎってもすぐ芽を出す。地下には白い根が張り巡らされ、どこまでも広がっている。地中にはびこる根茎を見ると火炎放射器で焼き切りたいとさえ思う。
 こんなドクダミも白い清楚な花をつけ、鎮痛、解毒などの漢方薬として古くから役に立っているというから始末が悪い。最近は、白い斑入りや赤い葉のドクダミが鑑賞植物として愛好されている。
 家内は鉢植えをもらってきて、水や肥料を遣って大切に育てている。鉢底の穴から根が噴き出していて露地に蔓延する怖れもある。
 間違って捨てないようにと言う。根絶すべき雑草と思っているのに・・・。

 ハナニラは、隣の公団団地の広場から移ってきたらしく、群れをなして生えてくる。ニラに似た多年草で白い花をつけ、ニラの臭いがする。外来種のせいかなんとなく謎めいている。地中深く伸びる球根は簡単には引き抜けない。鍬で掘り起こし、よく乾燥してから廃棄する。放っておくとあっという間に白い花だらけになってしまう。これも園芸植物として人気あるというから驚く。

 ドクダミやハナニラを雑草扱いにするのには異論があるかもしれないが、栄養分や光を横取りするのだから招かざる草であるのは事実だ。
 「雑草という名の植物はない」の言葉を残され、全ての草をいつくしまれた生物学者昭和天皇の心境には程遠い。

(13・5・23)

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