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「800字文学館」

「ニート」の勧め

野瀬 隆平

 健康を維持し、メタボにならぬようにするには、食事に留意するだけでなく適度の運動が欠かせない。
 運動というと、スポーツとかランニングをする、あるいはジムで体を鍛えるなど、意図的に体を動かすことを思い浮かべる。しかし、本来、人間は日常生活を営む中で意識しないうちに、かなりの運動をしているのである。便利な乗り物や道具ができるまでは、十分に体を動かしていた。
 ところで、通常「ニート」といえば、若者が職に就いていないが、かといって教育も職業訓練も受けていない(Not in Employment, Education or Training)のことだ。しかし、ニートで表わされるもう一つの意味があることを知った。Non Exercise Activity Thermogenesisを略したNEATである。生活をする中で自動的に体を動かす事である。Thermogenesisとは難しい英語だが、「熱発生」とでも訳せるだろうか。

 人間が消費するエネルギーには三種類ある。一つは、基礎代謝と呼ばれるもので、体温を保ったり心臓を動かすのに必要なエネルギーだ。体格にもよるが、これがおよそ全体の60%を占める。次は、ややもすると忘れられがちだが、食物を摂取、吸収し体内に保存するために要するもので、6~12%程度である。残りが、いわゆる体を動かすのに要するエネルギーで、一日の消費エネルギーのおよそ30%を占める。
 この体を動かす運動には、意図的に行う運動と、生活する上で自動的に行うニートとがあることは、先に述べた。前者のカロリー消費量は、思ったほど多くなく、後者のニートによる熱消費が圧倒的に多い。個人の生活パターンによって大きく異なるが、両者の差は一日当たり、2000キロカロリーにも達することがある。

 ある研究によると、職場や家の中で長い時間座ったままでいるのと、立って動いているのとでは、その違いだけで消費するエネルギーは一日当たり数百キロカロリーもの差があるという。外出しない日も、家で座ってばかりいないで、進んで家事をしよう。連れ合いの評価も上がり、正に一石二鳥である。

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