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「800字文学館」

若者にはついてゆけない

都甲 昌利

 新宿駅地下鉄の改札を出た通路の壁に掛るプラスチックのパンフレット置きに『R25』という若者向けの無料の情報誌(40ページ)がある。「オトコが進化する情報マガジン」とサブタイトルが付いている。手に取って読むと『R25』とは「18禁」に倣い「25禁」つまり「Restricted25」という意味で25歳以下の若者向けではないという意味だ。25歳以上の男性サラリーマン向けに編集したとある。
 目次を見ると2週間分のカレンダー、今話題のランキングレビューとして、大人のお花見、ホワイトデーのお返し、若者投票率日本は低すぎ? 「スポーツ合コン」は成立率50%超、など。特集で「男の休日コーディネート好感度ランキングベスト10」、インタービュー記事で今話題の中村勧九郎が登場している。
 この雑誌の中に「モノ感度鑑定」と称し流行を探る項目がある。全部で5問。
 Q1:映画「オズはじまりの戦い」の主人公オスカーの本業はどれか? ①マジシャン、②ピエロ、③コメディアン。 Q2:映画「愛、アムール」で主人公を演じるルイ・トランティニャンは現在何歳? ①72歳、②82歳、③92歳。Q3:名優トム・ハンクスがアカデミー賞を受賞してない作品はつぎのうちどれ? ①「フィラデルフィア」、②「フォレストカンプ」③「グリーンマイル」。こんな調子だが、私はすべて答えられなかった。正解ひとつは「まだまだ」、2~3で普通、4~5で上級者と評価がありゼロは評価に値しないのか、無視。正解ゼロでもショックを受けなかった。こんなことはどうでもよいからだ。
 この雑誌で一番興味深く読んだのは、作家の石田衣良、高橋秀美のエッセイだ。このエッセイだけは波長が合う。
 私は若者の考えや世の中の情勢に取り残されないために『週刊文春』、『週刊新潮』、月刊誌『文芸春秋』その他いろいろの雑誌を読んでいるが、そんなものではだめなことが分かった。若者についてゆくなんて言う考え自体が間違っているのだ。

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