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「800字文学館」

電気自動車と原発

志村 良知

 電気自動車についてかなり深く考察する機会があった。
 電気自動車は、内燃機関の代わりに蓄電池とモーターを備え、外部からの電力で蓄電池を充電し、その電気エネルギーで走る。
 最大の特徴は自動車そのものからは排ガスが一切出ない事で、このことは電気自動車のカタログとあらゆる媒体の広告で全面的に強調されている。反原発運動のリーダーである高名な音楽家もテレビCMで「CO2が完全にゼロ、こんなに気分が良い事はない」とにんまりしている。

 電気自動車は、現在ガソリンや軽油を直接の燃料としている内燃機関自動車を代替する事になるので、電気自動車が普及すると、それに必要な電力は純増となる。電気自動車が今ある日本中の内燃機関自動車全てを代替するには2千万kW弱の発電能力が必要で、これは現在の原発抜きの発電能力の約10%に相当する。
 電気自動車は、火力発電の電気を使っても内燃機関自動車より総合効率が良く、排出ガスも減るのであるが、劇的に化石燃料消費と排出ガスを減らす手段は原発利用である。さらに、時間がかかる電気自動車への充電は、夜間に本来の駐車場所で行うのが自然である為、常時フル運転の原発が生ずる夜間余剰電力の最高の消費先となる。
 3・11以前の電気自動車に関するいろいろな記事を読むと、開発の初期から電力の供給源として想定されていたのは原発であることがわかる。原発を前提として初めて化石燃料消費量削減や、売り物のCO2排出量削減が達成できる。今後も原発利用を進めていくとしている国々では、原発とセットでバスやトラックを含めて都市交通のクリーン化を図るであろう。

 一方、既存原発も使えない、となりそうな日本では、まず太陽光発電とセットで郊外の戸建ての住人に普及するであろうが、これでは趣味の乗物の域を出ない。原発無しというハンディをはねのけ、電気自動車が環境保護と両立する新しい世界を拓けるか、どうなる、どうする技術立国日本。

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