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「800字文学館」

ベルギーという国

都甲 昌利

 ベルギーは不思議な国だ。先日、日本の新聞に「2010年6月以来、約1年半、ベルギーは正式な政権が存在しないという異常事態が続いていたが、ようやく6政党が2012年予算案で合意し、新政権が樹立した。国王は社会党のエリオ・ディルポ党首に組閣を指示、これにより新内閣が発足した」という記事が出ていた。

 この記事を読んで何のことかさっぱり分からなかった人がいたのではないかと思う。ベルギーは1839年オランダから独立した若い国である。正式名はベルギー王国。この時、オランダ語の一種であるフラマン語が公用語の北部とフランス語が公用語の南部地方(ワロン圏)に二分された。建国以来、この言語対立の戦争が今も続いているのである。日本語と云う単一言語を話す我々日本人にとっては理解を超える。
 私がブラッセルに赴任した時、ベルギーの観光大臣に挨拶に行くため京都の七宝焼きの壺を持っていった。ところが観光大臣が二人いたのである。「一人だけに贈ると大変なことになるぞ」と脅かされて壺を急きょ取り寄せたことを覚えている。

 ヨーロッパの九州ほどの面積しかない小さな国が世界の注目を集めているのは重要な国際機関があるからだろう。欧州連合(EU)の本部と北大西洋条約機構(NATO)はブラッセルにある。この他、欧州経済連合会や国際航空連盟の欧州本部もある。今の欧州金融危機に絡むEU条約改正案で独仏が近く提案するというニュースもブラッセル発だ。ベルギー人はブラッセルを欧州の首都と呼んでいる。

 その地理的優位性からトヨタ、日産、ホンダはベルギーに部品供給基地を置いている。初代の日本・ベルギー協会の日本側会長は本田宗一郎氏でベルギー側はバッソンピエールという伯爵であった。

 美智子皇后に結婚話が持ちあがった時、マスコミの取材を避けるため、ベルギー王室が避難場所として受け入れてくれたこともあり、日本の皇室とベルギー王室は仲が良い。  ベルギーは対日感情が非常に良い国である。

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