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「800字文学館」

勲功章のママさんランナー

松谷 隆

 10月8日、山口国体の陸上競技会場でママさんランナー赤羽選手と周平専任コーチが日本陸連より、勲功章を受賞した。8月末からの世界陸上大邱大会での5位入賞が評価されたものである。同大会やアジア競技会でのメダリストや入賞者が受賞している。
 頭の固い日本陸連も少しは進歩したかと思った。しかし、陸連のホームページやスポーツ紙でもこのニュースを見ていない。見落としたのかな。もし、陸連が未公表なら、その理由を知りたい。今回メダル2個、入賞者5名の目標が達成できなかったので遠慮したのかも知れない。

 大邱大会終了後マスコミや評論家の大半が「初日の女子マラソンでメダリストが出なかったので、日本選手団の意気がそがれ、目標が達成できなかった」と戦犯扱いのコメントを出している。たしかに赤羽選手も「メダル獲得が目標、それも一番いい色」といってきた。切磋琢磨してきた選手としては当然であり、それを鵜呑みにする方が悪い。日本のマスコミの最大の欠点だ。

 愚痴よりも、赤羽選手の進化ぶりを分析するほうがよほど楽しく、今後に期待できる。彼女は今年すでに大阪、ロンドンおよび大邱と3回もマラソンを走った。これは男子でもめずらしい。まず1月、大阪で初優勝。4月のロンドンでは昨年を上回る5位入賞と2時間24分9秒の自己新、そして今回はトップの背が見える50秒差の5位入賞と確実に進化している。特に、35㌔からの5㌔を16分48秒、最後の2.195㌔を7分15秒と優勝者に2秒遅れの2位で走ったことは特筆されるべきである。
 周平コーチも「スタミナの強化に力を入れすぎて、本来のスピード練習まで手が回らなかった」とメダル獲得失敗の原因を分析済みなので。手抜かりはないだろう。これで2年前のベルリンでの失敗を克服できた。今後はスタミナとスピードの両方に練習を積み、一段上をめざすに違いない。その結果、ロンドンで好成績をあげ、万人周知の勲功章をもらうことを期待している。

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