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「800字文学館」

同時多発テロから10年

野瀬 隆平

 10年前の9月11日。ワールド・トレードセンターが倒壊するショッキングなテレビの映像は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。この日にアメリカで起こった同時多発テロは、かつてない規模のものであると同時に、多くの謎を持つ出来事で当初から様々な疑問が投げかけられてきた。米国政府による陰謀だという極端な説もあった。
 事件から3年後にアメリカのある会社が行った世論調査では、ニューヨークに在住する約半数の人が、米国政府の首脳はこのテロ計画が存在すること、あるいは9月11日頃に実行されることを事前に知りながら防ごうとしなかった、と答えている。さすがに陰謀説を支持する人は多くないが、ほとんどの人は政府が情報を操作したり、事実を隠ぺいしていると考えている。さらに事件から5年後の2006年にCNNが世界規模で行った調査では、75%もの人が、米国政府の自作自演だと答えている。米国以外の人たちが疑念を持つのは分るが、アメリカ人ですら半数が疑いを持っているのは驚きだ。
 疑問点を取り上げた本も数多く出版され、2007年には、疑惑を世間に知らしめる「ZERO 911」と題する映画がイタリアで作られ反響をよんだ。昨年9月に日本でもこの映画が公開されたので見に行った。説得力のある映像によって、改めてこの事件の真相について考えさせられた。
 映画や本が指摘する主な疑問点は、あの巨大なビルがたった1機の旅客機の衝突で簡単に崩れ落ちるものなのか。ペンタゴンの破損の状況や残留物から判断して旅客機の突入によるものとは思えない、などである。

 あれから10年経過した今年の5月、オバマ大統領はテロの首謀者であるオサマ・ビンラディンを、ついにパキスタンで見つけ出し殺害したと、誇らしげに宣言した。しかし、これで一件落着でないことは明らかである。アメリカが報復措置としてとったイラク、アフガニスタンへの侵攻、その戦争がもたらした後遺症はいつまでも消えることはない。

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