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「800字文学館」 仕事がらみ

格安航空会社(LCC)

都甲 昌利

 最近、日本にも「空の自由化」が訪れ、外国の航空会社がシドニー、クアラルンプール、シンガポール、北京などへ日本から片道3000円、4000円の低料金で日本市場に参入してきて、JALやANAを脅かしている。両社も遅ればせながら子会社を作り対応策に出た。
 「空の自由化」とは何か? 今から約30年前、カーター政権下の1978年に米国で始まった国内航空規制緩和政策がその起源だ。その内容は、①路線参入の自由化 ②運賃の自由化 ③運航資格制限の撤廃が基本だ。この政策が導入された大きな理由は、当時、停滞色を強めていた米国経済を規制緩和による競争の促進によって活性化しようという試みで、財政の健全化を図るため官僚機構の縮小するという狙いがあった。この結果40年間航空行政を指揮監督してきた米国運輸省の航空局(CAB)は廃止された。

 航空事業の特性は、航空輸送は空港施設(エアポート)という公共の設備の利用で自社による設備投資は不要であるということだ。整備・空港サービスは外注可能だ。競争手段は運賃のみである。新規参入が多ければ常に競争が起こり、運賃が安くなり消費者を満足させるというのだ。

 空の自由化によって米国国内市場に多数の安売りの新規航空会社が参入し、大手のUA,AAなどの航空会社を脅かした。ある年、格安航空会社の航空事故が頻発した。ヴァリュー・ジェットという航空会社のジェット機が墜落し死者98人を出した。航空事故調査委員会が調査に乗り出したところ驚くべき事実が判明した。エンジンをはじめ航空部品がすべて中古品だったのである。機体自体は古くなっても部品交換はすべて新品を使うというのが当時の常識だったからである。だから、航空機は常に新しくなっているといわれた。VJは大手を解雇されたパイロットを低賃金で雇い、コストを安く抑えて利益優先で安全性を犠牲にした。
 格安航空会社も安全面では充分気を配ってもらいたい。

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