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「800字文学館」 日常生活雑感

Fly to the World!(その一)

西川 武彦

 2月初め、24時間運用する東京の国際空港として蘇った羽田の新国際線ターミナルを車で訪れた。世田谷の自宅から首都高に乗り40分足らずで着いた。平日の午前中である。成田なら道路が空いていても一時間半はかかるから所用時間は半減したことになる。まずこれで快哉を叫んだ。霞ヶ関を過ぎて暫くすると道は左右に分かれるが、『空港中央』でなく、『羽田』と表示された右側を選んだ。レインボーブリッジを渡る前者でも行けるが、平和島経由の方が昔馴染みの趣でよろしい。『羽田』という表示を追って走れば、迷うことなくターミナルに着く簡便さも嬉しい。アプローチがくねくねしていないのだ。
 新国際線ターミナルの第一の魅力はアクセスだろう。車でなく電車でも一時間あれば充分なのである。モノレールの終点で降りて同じ平面の改札を抜けたところが即出発ロビーとなっている。京急もある。二つの国内線ターミナルには、搭乗券を持った乗客ならそれらの電車が無料で運んでくれる。やっと世界レベルの国際空港が誕生した感じがする。ロビーには“Fly to the World”と書かれた洒落たデザインの旗が天井から何本か靡いていた。

 ターミナル内の掲示には日英に加えて、韓国語、中国語も併記されている。今や服装だけでは見分けがつかない両国からのお客様が圧倒的に多いのは、耳に飛び込む会話からも察しられる。土産物屋では、ハンカチーフなど、日本製とわざわざ表示されている。ギフトとしての価値が上がるのだろう。パリやローマの日本人客の買い物風景をふと思い出す。
 11時過ぎに着くと、お昼前まで自前の「ターミナル見学ツアー」を楽しんだ。半世紀前に入社して最初に配属されたのが、羽田の国際線カウンターである。ジェット機が国際線に登場するためJ社はてんやわんやの騒ぎであった。仕事が分化されている今時と違って全てをやらされたから、空港という施設は隅々まで知っている。その羽田に国際線が戻ったのだ。懐かしさで目が潤むほどだ。

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