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「800字文学館」 政治・経済・社会

ポイント制の効果

野瀬 隆平

 都心の大きな家電量販店にでかけた。デジタル放送に対応するテレビを買うためである。前もって各社の製品を比較して調べていたので、迷わずにお目当てのテレビがある場所に直行した。

 さて、買おうとして販売員を探したが見当たらない。いても、他の客の応対に忙しく、買うことを告げる相手がいない。レジに行っても店員は購入を決めた客の対応に追われていて、声がかけられない。側を見ると、一人の店員がなにやら紙を配っている。順番待ちの整理券を配っているのである。10万円もする品物を買うのに、整理券をもらって待つなんて。やっと順番が来て数日で届けてもらうことになったが、品物によっては何と一ヶ月も待たなければならない製品もあるという。

 買い替え需要が山を迎えているところに、エコポイントの点数が12月から少なくなることが重なったとはいえ、この不景気なときに珍しい現象だ。家電製品のエコポイント制については、「エコ」の名を借りた景気対策だとかねがね思っていたが、その効果が絶大であることを目の当たりにした。エコ・カー減税で車の販売台数も伸び、自動車メーカーの利益も大幅に増大しているという。しかし、この優遇制度が終われば、その反動で今後は売り上げが伸びることをあまり期待できないだろう。

 そこで、このような優遇制度を、エコなどという理屈をつけずに、他の日常生活に必要な品物にも適用したらどうだろうか。景気浮揚策として、即効性があることはすでに実証済である。勿論、その為に財源がいるには違いないが、効果が投入したコストよりも大きければ問題は無い。その効果は徐々に波及して、経済全体の活性化に大いに役立つと考える。

 確かに財政が赤字の現状では採りにくい政策かもしれない。赤字を解消するには、「入りを量りて、出づるを制す」というのが鉄則であろう。しかし、不景気なときに増税をした上に公共投資をおさえれば景気は益々悪くなり、結局財政赤字は膨らむことになる。

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