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「800字文学館」 芸術・芸能・音楽

1+235本のトランペット大集合

小寺 裕子

 とても風変わりな催しに行った。私が敬愛してやまない「難民を助ける会」の柳瀬房子会長が企画したチャリティコンサートだ。かねてからトランペット奏者エリックオービエのファンである柳瀬さんが、彼と合奏するアマチュアを百人公募したところ、熱烈な売り込みの手紙が全国津々浦々から三百通も来たそうだ。結局二度の練習に参加できることと、サントリーホールの舞台の大きさから奏者を二百三十五人に絞った。

 小さい頃トランペットが出てくる絵本を読んで感激し五月に念願の楽器を買ってもらったばかりの小学生や、二人で思い出作りをしたいという夫婦や、七十代の人など演奏者は誰でもござれという感じだ。オービエ氏も柳瀬さんも懐が深い。オービエ氏は、
「様々なレベルの人が音を合わせると、普段よりいい演奏をしようと努力する。それが目的だ」
と答えている。

 日本人は寄付をしない、と言われているが、その思い込みもこのコンサートは見事に覆してくれた。参加費は社会人は二万円、大学生が一万円、それ以下は無料だ。参加費には全員お揃いのTシャツと入場券一枚が含まれている。しかし練習と演奏当日の旅費だけでもかなりの額になる人も多いはずだが、人のために役に立ち、巨匠の指揮でサントリーホールで演奏できるなら出費を厭わない人がこれほどいるのだ。
「カンボジアで地雷被害者を多く見た。どんな形でも支援したい」
「トランペットで誰かを笑顔にできるならぜひやりたい」
「女性のトランペット吹きに出会いたい」
参加者の思いも様々だ。

 さて演奏はというと、一曲目はちょっと不ぞろいという感じもしたが、第九「歓喜の歌」などはまるで歌のように聞こえて感動した。オービエ氏のソロには、トランペットの音色とはかくも天衣無縫なのか、と身震いした。

 切符はS席でも六千五百円だが、寄付も含め、純益420万になったそうだ。一つの舞台でのトランペットの数というギネスブック登録も近い。

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